■五木が選んだ2曲
番組では、ゲストに2曲を選んでもらっている。
「記憶の中で今もきらめく曲」は、美空ひばり「リンゴ追分」(52年)。
5~6歳の頃、ラジオで聞いていた曲で、母が入院した時に見舞いに行って歌い、以来病室のみんなが楽しみしてくれた曲だった。歌手をめざすきっかけになった曲だ。
2曲目の「今、心に響く曲」は、井上陽水の「人生が二度あれば」。
“もし親に人生が二度あれば、今度はもっと楽な、自分のための人生を送って欲しい”という子供の視点の歌だが、「今は親の立場になり、そんなことを思ってくれる子供の心がわかる親の思い」を五木は重ねているという。2曲目にフォークソングを選んでいるが、演歌歌手の五木は早くからフォークやポップスなど、幅広いジャンルの音楽を取り入れている。NHK交響楽団とポップスでジョイント・コンサートを開いたこともある。シャンソンをカバーしたこともある。「ジャンルが異なる歌手が一緒だからおもしろい」「うまい下手ではない。良い歌かどうかが重要」という五木は、今の歌謡界が「ジャンルごと、世代ごとに分かれてしまった」ことが残念でならないという。
下積みを入れるとほぼ半世紀。
歌謡界に関わってきた五木のトークや歌を聴くと、まさに「歌は世につれ世は歌につれ」という通り、歌も変化すると同時に、時代が変わってきたことが見える。しかし変わらない思いがあるからこそ、五木がずっとトップランナーだった状況も浮かび上がる。
半世紀の歌手人生を30分に凝縮した番組は、なんとぜいたくな時間だろう。
五木ひろし
わすれ宿/のぞみ(希望)/男の友情
発売日:8月23日
「わすれ宿」 作詞:中山大三郎 作曲:船村徹 編曲:前田俊明
「男の友情」 作詞:高野公男 作曲:船村徹 編曲:蔦将包
「のぞみ」 作詞作曲 船村徹
DVD付き わすれ宿 定価1,500円 CD1,300円